黒檀 弐

　

あのね。

亀吉さんと一緒に、戦場に行ってん。
途中までは坤も近くに居てたやんね。

二人で帰ろうねって言うて、
約束して、

ずっと離れないって。
手、繋いで。



（右手のぬくもりは　彼方のものじゃないけれど）


最初、森の入り口じゃほんますごかってん。
あんたも見てた？

あの人サーチャーやから、
あっという間にあたしの手を引いて動いてんよ。
あたしいつも、口寄せ文句最後まで言うん遅いのに、真っ先に祖霊さん降ろせたの初めてやった。



（見とったよ、と打たれた相槌は投げやりやのうて）


あたしそん時思ってん。

亀吉さんと手を繋いでるから、
惣ちゃんがあたしの中に居てるから、
あんたがあたしの傍に居てるから、

だから闘えるねやって。

勿論もっと、大事な人たちいっぱい居てるからね。

…えっと。



ん、そう。

大事な人が居てるから闘える。

弱くてもへたれでもええの。
身の丈で頑張るしかないやん。




そう、思っててんけど、ね。