Baby hold on

（欧州のどこかで小さく鳴り響く、大好きなあの歌は）

「……！」

慌しく、買ったばかりの携帯電話を開く。


”Eメールあり　１件”


From：亀吉さん
Sub：送れるかわかんねーけど
本文：
今頃さみしーとかいって、そわそわしてそうなたっつんにメール！
…まぁ、送れるかわかんねーんだけど。
戦争お疲れ！いや、お互い生きてて何よりで！
あー、あの少年に超睨まれたけど。あはは。頼りないオレでメンゴ＞＜
修学旅行はしっかり楽しんできな！お土産はスッゲー楽しみにしてるから！
とりあえず、これ以上打つと酔いそうなのでこの辺で。



思わず小さな液晶の画面にキスを落とし、何度も何度も読み返す。

メールを打てるくらいには元気だってことと、
こうして気にかけてくれることが同じくらい嬉しくてならなかった。

自然と細くなる瞳を、幼馴染が目ざとく見つけてため息ひとつ。


「…おお、アホノコが居てるな。オトコか。」

「そやでー？あんたのとこと違ってラブラブですから！」

「あ、そ…。」


昨日までの不安な気持ちは、もう、晴れた。
だって、あたしはずっと好きだから。

亀吉さんが好きだから。

あんたも頑張り、と幼馴染に悪戯っぽく笑いかけ、
小さな液晶に愛を囁き始める。



To：亀吉さん
Sub：鎌倉に帰ってから読んでね
本文：
な、なんであたしが亀吉さんのこと考えた瞬間にメールがくるん？
エスパーが居てるって本気で思ったんよ！

えっと…戦争、ほんまにおつかれさまやったね。
一緒に闘ってくらはったこととか、あと他にも、めっちゃ嬉しかった。
でも怪我さしてもうたんが悔しゅうてしゃあない、あたしもっと強くなるから。
いっぱい話したいことあるから、駒鳥かStMで待っとってね。

それからそれから、帰ったら色んなとこ行こな。
花火とか夏祭りとかプール…あの、黙示録じゃないやつ。

ほなね、すぐ帰るからね！

追伸。
桜のことは気にせんとってね。
あの子、お子様やから。

<END>





「…ねー坤」

「何よ」

「ハートの絵文字ってどうやって出すん……？」

「自分で調べろ阿呆」