黒檀 参

　

輝きの森でな

繋いでた手が
何かの弾みに離れてもうて



離れたらあかん、って



声が出た時に…怖いもんが見えてんよ。



亀吉さんがどんどん先に行ってまうの。
あたしを置いて、祖霊さんも舞も届かへんとこまで。

事実、幻やのうて現実やってんけどね…



でも、さっきまでやっとったのは戦争やろ。
大怪我も何もせんプールとはちゃうねんよ。

あたしの目の前には亀吉さんより酷い怪我人が居てるし、
氷、封術、何とかせなあかん人らもね。

亀吉さんだって誰かに装甲かけるために走ってった。
それやったらあたしも出来ることするしかない。



そう思て、何度も口寄せで惣ちゃん呼んでんけど……




……あかん、思い出すのも嫌やわ




人狼がな…

亀吉さん、凍らした、とこ…
見てもうてん………。

でも
走ったら惣ちゃん呼べへんし舞えへんし
それじゃなしに行ったところで盾にもなれへん

そうやって逃げて
やれることしかせんで



あたし

自業自得やって分かってるのに



他の人が亀吉さんの怪我治してんの見て

すごい、すごい哀しくなって……



阿呆やろ？

結局何もせんかってん。
亀吉さんが戻ってくらはるまで、
弱いオンナよろしく立ち尽くしててん。


…なァ。

阿呆やわ。




いつまでたってもあやなしやで、ほんま……。