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ライブ会場から、亀吉さんとお互いそのままの…
ステージ衣装と水着にTシャツなんて格好で駒鳥への道を歩く。
腕を取り、時々歌い、笑い、誰も居ない信号待ちでキスを交し。
浮かれた夏の夜は、短く長い。
満月も見て見ぬフリで二人の足元を照らしている。
まるで、今もステージが続いているかのように。
駒鳥の正門をくぐる前は、桜の下で立ち止まるのがお約束。
煌く言葉を紡いだ唇を、今この時だけ独り占め。
水を被って濡れた髪に指を絡め、彼は何度も囁いた。
「……これは帰したくないなー。」
「送っとってでしょ?…また明日ね。」
これ以上は、離れ難い。
夢心地と、眠気と、疲れとが二人の前に出ているうちに、夜を一人で終えないと。
「…ん、また明日な。おやすみ、たっつん。」
「おやすみ、亀吉さん。」
最後に名前を呼び合って、もう一度だけ唇と体を寄せる。
焼けた肌が擦れて、甘い痛みを覚えた。
「ただいまァ…。」
ビーチサンダルをたたきに脱ぎ捨て、揃える気力も無くふらりと廊下に足を進めた。
遅い時間にも関わらず、居間の灯りがついている。
誰が居るのかも気にならないほどくたくたに疲れていた。
手前にある台所に入ると、丁度桜が冷蔵庫の麦茶を飲もうとしているところで。
「ちょ、ちょお!! 服! ちゃんと服着いーてたつみさん!!」
Tシャツとパレオで隠すところは隠しているからそれほどまで問題無いように思うのは、
きっと祭りで頭が浮かれているからだろう。
桜が手に持ったままの麦茶のボトルをひょいと取り、自分用に湯飲みへ注いでぐっと飲み干した。
「ええやん、皆こんなカッコやで?
…それより、今日もうあかんわ。ほんまくたくた。ごめんやけど、明日の朝ご飯適当にしてもうてええ?」
明日も学園祭はやっているから、と
屋台で適当に食べて欲しい旨を伝えて湯飲みをシンクに置き、ふらりと自室へ戻る。
さっきまでの道のりはきっと、亀吉さんが支えてくれたから歩けていたのかもしれない。
耳に残る大音量と、飛んだり跳ねたりの連続で足が覚束なかった。
「………。」
居間の前を通り過ぎる、その時。
城崎が自分を見ていた。
言葉は無い。
何も言われなかったから何も言わない。
ただ何か、何か。
桜とも惣ちゃんとも違う、異質な目線。
けれど何かに似ている。
台所での会話は聞いていただろうと思い、
ごめんねの意を込めて少しだけ微笑む。
何か言いたげな無反応。
それは
言いたいことを気軽に言う癖に、大事なことは聞かせない。
その代わりに唇をくれる、
大好きな亀吉さんの眼差しを思わせた。
***
彼女は知らない。その理由を。
彼女は拒まない。その目線を。
彼女はいつまでたっても気づかない。その理由を。
ステージ衣装と水着にTシャツなんて格好で駒鳥への道を歩く。
腕を取り、時々歌い、笑い、誰も居ない信号待ちでキスを交し。
浮かれた夏の夜は、短く長い。
満月も見て見ぬフリで二人の足元を照らしている。
まるで、今もステージが続いているかのように。
駒鳥の正門をくぐる前は、桜の下で立ち止まるのがお約束。
煌く言葉を紡いだ唇を、今この時だけ独り占め。
水を被って濡れた髪に指を絡め、彼は何度も囁いた。
「……これは帰したくないなー。」
「送っとってでしょ?…また明日ね。」
これ以上は、離れ難い。
夢心地と、眠気と、疲れとが二人の前に出ているうちに、夜を一人で終えないと。
「…ん、また明日な。おやすみ、たっつん。」
「おやすみ、亀吉さん。」
最後に名前を呼び合って、もう一度だけ唇と体を寄せる。
焼けた肌が擦れて、甘い痛みを覚えた。
「ただいまァ…。」
ビーチサンダルをたたきに脱ぎ捨て、揃える気力も無くふらりと廊下に足を進めた。
遅い時間にも関わらず、居間の灯りがついている。
誰が居るのかも気にならないほどくたくたに疲れていた。
手前にある台所に入ると、丁度桜が冷蔵庫の麦茶を飲もうとしているところで。
「ちょ、ちょお!! 服! ちゃんと服着いーてたつみさん!!」
Tシャツとパレオで隠すところは隠しているからそれほどまで問題無いように思うのは、
きっと祭りで頭が浮かれているからだろう。
桜が手に持ったままの麦茶のボトルをひょいと取り、自分用に湯飲みへ注いでぐっと飲み干した。
「ええやん、皆こんなカッコやで?
…それより、今日もうあかんわ。ほんまくたくた。ごめんやけど、明日の朝ご飯適当にしてもうてええ?」
明日も学園祭はやっているから、と
屋台で適当に食べて欲しい旨を伝えて湯飲みをシンクに置き、ふらりと自室へ戻る。
さっきまでの道のりはきっと、亀吉さんが支えてくれたから歩けていたのかもしれない。
耳に残る大音量と、飛んだり跳ねたりの連続で足が覚束なかった。
「………。」
居間の前を通り過ぎる、その時。
城崎が自分を見ていた。
言葉は無い。
何も言われなかったから何も言わない。
ただ何か、何か。
桜とも惣ちゃんとも違う、異質な目線。
けれど何かに似ている。
台所での会話は聞いていただろうと思い、
ごめんねの意を込めて少しだけ微笑む。
何か言いたげな無反応。
それは
言いたいことを気軽に言う癖に、大事なことは聞かせない。
その代わりに唇をくれる、
大好きな亀吉さんの眼差しを思わせた。
***
彼女は知らない。その理由を。
彼女は拒まない。その目線を。
彼女はいつまでたっても気づかない。その理由を。
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プロフィール
HN:
依藤たつみ
性別:
女性
自己紹介:
依藤たつみ(よりふじたつみ)
土蜘蛛の巫女×鋏角衆
仁奈森キャンパス2年1組
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シルバーレインのPCが綴る日記
アンオフィシャル設定など含みます
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