忍者ブログ
『シルバーレイン』内PC 依藤たつみの日記
[78] [77] [76] [75] [74] [73] [72] [71] [70] [68] [67]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

暁の方角へ、閃くのは。

+ + + + + + + + + +
前から、独りで闘う為の武器が欲しかってんよ。

丁度、依頼で前に出んとあかんかもしれんことになって、
ずっと部屋中ごそごそやっとってんけど。

銀学に来る時、お養父さんからもうた太刀が出てきて。
これなら使えるかもしれん、て久しぶりに中庭で抜刀してみたんや。


なんか…こう。何やろ。
すごい懐かしいねん。

元はお養父さんのもんやのに、ずっとあたしの傍にあったみたいな感じがして。
握ってるだけで安心出来る。
亀吉さんに抱き締められた時みたいに、何も考えんとただ幸せでおれる。



自分があやなしやってことも忘れてまうくらいに。



井伏が言うてたあの地縛霊を成仏させたげたい、
それやったら薙刀やのうてこっちのほうがええかもしらん。

そう思って、打ち直すことにした。

太刀の手入れはそないに経験が無いし、
打ち直しの材料があたしじゃ手に負えん代物やったしで、
亘理に頼んでんけど。





***(回想)***




夏の夕陽は気が長い。

碧落と名のついた、その教室の扉を開ける。
まるで時間が止まってしまったような、窓越しの世界が目に優しい。
夕陽がよく当たる机に腰掛け、滲む汗に構わず外を眺めた。

昨日の同じ時間、亘理にあの太刀を手渡してから一日。

大事なものを託した相手は、夕陽の色。
ただ一人の家族とは違う色。

そわ、と所在無く机を指で叩き、時間が過ぎるのを待つ。
依頼のこと、太刀のこと、大事な人のこと。頭を過ぎるよしなしごと。

からりと開いた扉の音に気づいたのは、皮肉なことに少し経ってからで。


「…あ」


頭を軽く振り、意識を目の前に戻す。
いつもと変わらない夕焼け、いつもと変わらない友達。


「多分これで間違いはねぇと思うんだけどよ」


そう言って寄越してくれた布包み。
姿を見ないでも、これだと分かるあたたかさ。

ゆっくりと布を取り、自分と亘理以外に誰も居ないのを確かめて静かに抜刀する。



「……おとうさん…」



鈍く煌く刃を目にし、柄を握り直した瞬間。
祖霊を寄せた時のような力強さを感じた。



守られている。

この太刀に。



心がまた一つ、氷解する。
窓際で出迎えた時より柔らかい笑みを亘理に返し、太刀をそっと鞘に仕舞った。

頑張ってこいよ、といつもの調子で笑んだ亘理を、
いつもより近くに感じた気がする。

亘理。おおきに。
無事に帰るからね。







名称:楠景光
種別:武器(大事なもの)
分類:秘儀幻惑無常日本刀
設定:【くすのきかげみつ】養父から貰った一振りの太刀。天正拵の鞘に鴉の彫りが入る。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
プロフィール
HN:
依藤たつみ
性別:
女性
自己紹介:
依藤たつみ(よりふじたつみ)
土蜘蛛の巫女×鋏角衆
仁奈森キャンパス2年1組

***
シルバーレインのPCが綴る日記
アンオフィシャル設定など含みます
お嫌いな方はブラウザバック推奨

コメント、リンクはご自由に!

日記でのお名前掲載、行動描写等
不快に思われましたら御指摘を…
削除または編集させて頂きます
最新コメント
[02/10 ミカドシンル]
[08/29 弓場白]
[06/30 神城・月]
[06/30 桜次胡乃]
[06/29 たつみ]
アクセス解析
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright © 八咫烏 All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]