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『シルバーレイン』内PC 依藤たつみの日記
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__巽、よくご覧

「はい、女王様」

墨汁で満たされた硝子の小瓶に、女王様が水を注ぐ。
少しずつ少しずつ、何かの儀式のように。


__水を注げば墨は薄まる

「はい」

__最初のうちはの、この色が透明に近づくのが楽しうて飽きぬものじゃ

「はい」

__それでも、ご覧。どんなに水を注いでも、決して墨は消えぬ

「…はい」


確かに、女王様の言う通り。
墨の色は薄くなれど決して無色の水にはならず。


__水は水。墨は墨よ

「はい」

__同じように、人は人。蜘蛛も、どう足掻いても蜘蛛のままよ

「はい…」

__それでよい。おまえとわたしは別。それが理

「女王様」

__何ぞ?

「それは哀しいことと違いますか」


女王様はゆるく首を振った。
あたしと同じ色の、綺麗な髪が優しく揺れる。


__理に哀しみは無い。別だからこそ好くことが出来る

「それは、どうして?」

__別であること。それはおまえがこの世にただ一人であることを意味する

「ただひとり…」

__そう。わたしもこの世にただ一人

「…はい」

__おまえはわたしの子供達に名前をつけた

「はい」

__惣一郎、御先、駒鳥、槿、白銀…

「女王様のお子は皆、ええ子です」

__あれらには皆、己がある。自分がこの世にただ一人という、確かな己が

「…?」

__巽

「はい」

__己を持つことを子供達に教えたのはおまえぞ

「…はい」

__おまえの己は一陣の風であれ

「風?」

__風が吹き抜け肌を擦る時、感じる。わたしが世界に生きていることを

「はい」


やわらかい御手であたしの頬に触れる女王様。


__生きるものと触れ合い、己の形を感じなさい

「はい」

__それでよい、巽。おまえは己と己の間に吹く、愛しい風の子。

「…はい。」

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プロフィール
HN:
依藤たつみ
性別:
女性
自己紹介:
依藤たつみ(よりふじたつみ)
土蜘蛛の巫女×鋏角衆
仁奈森キャンパス2年1組

***
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