たがため

鴉の間。
小さな文机の引き出しには、クリアファイルに挟まれたA4の書類が入っている。

日曜の昼間。
部屋の主は何処かへ出かけているらしい。

"結社申請受理通知


申請者名：依藤　たつみ（学生番号　b41087）
結社名：下宿屋　駒鳥
結社設置住所：鎌倉市○○町××-××

能力者の住環境提供、及び情操教育を目的として
以上の結社を学園管轄下に置き、申請者による運営を許可する

以下、結社規約

一、結社長は能力者としての本分を強く自覚し
結社団員の模範となるべく恒の努力を怠らぬこと

二、結社長は申請者自身が就くものとし
止むを得ない事情により結社長を交代する際は学園長の許可を得ること

三、結社の運営に係わる諸費用は全て銀誓館学園が負担するものとし
結社長は当月分の収支報告を翌月十日までに行うこと

平成二十年　五月二十三日
銀誓館学園　学園長　田中雄大
"




（校長室にて）

「校長先生、一月の収支報告です」

「はい、ご苦労様」

「……。」

「うーん…やっぱり食費がかかるねえ」

「二十人の大所帯ですから、御寛恕ください」

「ああ、悪いとは言ってないよ。生徒の皆にはちゃんと食べてもらわないとね」

「すみません」



「団員の様子はどうかな？」

「団員と違います。店子さんです」

「…ああ、その店子さんの様子はどう？」

「……。」

「今月は防衛戦があるから、医療費が必要になったら早めに報告するようにね」

「……はい」

「君は、」

「……。」

「今回の戦争、まだポジションに就いていないそうじゃないか。
不参加ということはないよね」

「参加します」

「では、結社で作戦や進軍ルートについて話し合いを行っている？」

「……いいえ」

「結社規約の一を忘れたのかな」

「…！　結社長は能力者としての本分を強く自覚し、
結社団員の模範となるべく恒の努力を怠らないこと、…です」

「そうだ。結社長が率先して能力者の本分を疎かにするようでは、
こちらも結社の運営費用を削らざるをえない」

「でも……家で、そんな話をするのは」

「君の境遇を知らない訳ではないから、結社で家族ごっこをするのは止めない。
けれど、覚えておきなさい」

「………。」

「能力者ならば、常に最悪の事態を想定しておくべきだ」

「……はい。でも…」

「でも？」

「……駒鳥の皆は、家族です。ごっこ遊びやありません！」

「結社長とは思えない発言だね。そうは思わないのかい」

「思いません。駒鳥は皆の家です。帰る場所です。
あの家に居てる間は、血腥いことなんか忘れて欲しいんです。
右も左も分からんと学園に来た来訪者さんには、帰る場所が必要なんです！」

「……君は、実の家族を失った穴を来訪者で埋められるとでも？」

「……え？」

「………。」

「………。」

「……何でもない。忘れなさい」

「………。」

「行きなさい」

「………はい」

「………。」

「…失礼します」








***
PL：

校長先生ごめんなさい。
アンオフィSSなので勘弁したってください。

結社の申請受理通知も思いっきり捏造です。
真似しちゃ駄目だと思います。

で、毎月駒鳥でかかるお金は領収書と収支報告書持ってって
校長先生に補助金請求してるんだろうなあと。
そんなところから生まれた会話です。

ついでに駒鳥で戦争系のスレを立てない理由とか、
たつみが店子さん＝家族に拘る理由とか、
実の家族に関するフラグとか。

たつみは実の家族が蜘蛛族に食い殺されましたが、それを覚えていません。
養父母としてたつみの身元引受人をしている楠木夫妻はそれを知っています。
校長先生は楠木夫妻から聞いたのでしょう。たぶん。

PL的にはそろそろ両親の記憶を取り戻してもいいかな、と思っています。
SS書くぞうー