喚子鳥

　

…何年前やったかな

あんときの女王はんは優しいお人やった

巫女の命を取るのは恥知らずの蜘蛛がすることやて
あたしが戻りたいときはまたお山に来やったらええて言うてくれた

せやし　蜘蛛さんは好きなんや

あたしは結局
人間のなかに立ち雑じることがイヤやってんな

鋏角さんの巫女になりたい言うたあたしを蔑んで楽しいならそうしたらええ
どうせあたしは出来損ないなんや　出来損ない同士でくっついとるわて指差したらええ

でもなあ

他の巫女があたしを笑うこと　あたしは平気やったけど
惣ちゃんが耐えられへんかったんやね

こんなん　人間の中で暮らしとったら当たり前やのに
あたしはいっつも惣ちゃんに哀しい顔ばっかりさせて










***

「あたしは巫女やけど、蜘蛛やったら何でもええのと違います」

「惣ちゃんの…が………のなら、せめて傍で仕えたいだけや…それだけなんや」

「それが出来なんだら、あたしは惣ちゃんとお山を降ります！　
どうせ二人とも蜘蛛と違うのや、ええやないか！」